キャリアがわからない30・40代へ|やりたいことがないまま働く不安のほどき方
20代、夢中になって働いたはずなのに、30・40代になってもキャリアがわからない。
やりたいことがある人や、明確な目標を持っている人を見ると、自分だけが遅れているように感じる。
「私はこのままでいいのかな」
「本当にやりたいことって何だろう」
「今の仕事を続けていて、将来につながるのかな」
そんなふうに、ふと不安になることはありませんか。
社会では、夢や目標を持っている人が評価されやすいように感じます。
「好きなことを仕事にしている人」
「やりたいことに向かって努力している人」
「自分のキャリアを主体的に選んでいる人」
そういう人を見ると、まぶしく見えることがあります。
でも、本当に「やりたいことがある人」だけが正しいのでしょうか。
誰もが、最初から明確な夢や目標を持っていなければいけないのでしょうか。
私は、そうではないと思っています。
やりたいことがないことは、悪いことではありません。
キャリアがわからないことも、恥ずかしいことではありません。
むしろ、これまで目の前の仕事や生活をちゃんとこなしてきたからこそ、ふと立ち止まったときに「この先、どうしたいんだろう」と考えるのではないでしょうか。
この記事では、キャリアがわからない30代に向けて、やりたいことがないまま働く不安を少しずつほどく考え方を書いていきます。
やりたいことがないのは、悪いことではない
結論から言うと、目標ややりたいことが見つからないことは、悪いことではありません。
昨日の疲れを引きずったまま、完全に回復しない体で、それでも翌朝きちんと起きる。
時間通りに会社へ行き、仕事をこなし、誰かに迷惑をかけないように働く。
これだけでも、本当は十分すごいことだと思います。
けれど、社会は「夢」「目標」「好きなことを仕事にしている人」を評価しがちです。
やりたいことがある人は前向きで、
目標がある人は主体的で、
好きなことを仕事にしている人は美しい。
そんな空気を感じることがあります。
もちろん、夢や目標を持つことは素敵です。
自分の好きなことを仕事にできるのも、とても幸せなことだと思います。
でも、だからといって、やりたいことがまだ見つかっていない人が劣っているわけではありません。
私たちはこれまで、必ずしも「好きなことを仕事にする人」になるように育てられてきたわけではないと思います。
むしろ、多くの人は、社会にとっての「いい会社員」になるように教育を受けてきたのではないでしょうか。
時間を守ること。
ルールから逸脱しないこと。
周囲に合わせること。
模範的に振る舞うこと。
逸脱しないこと。
そうした価値観の中で育ち、就職し、組織の中で働いてきた人にとって、急に「あなたのやりたいことは何ですか」と問われても、すぐに答えられないのは自然なことだと思います。
そもそも、やりたいことがずっと明確な人ばかりではありません。
一度見つけたと思っても、途中で変わることもあります。
環境が変われば、考え方も変わります。
経験を重ねれば、大切にしたいものも変わります。
だから、やりたいことがない自分を責めなくていい。
キャリアがわからないという感覚は、怠けているからではなく、今の自分をもう一度見つめ直そうとしているサインなのかもしれません。
「これだ」と思っても、違うことはある
私たちは、その時その時で、できる限りの選択をしてきたはずです。
たとえそれが後から見れば正解ではなかったとしても、その時の自分なりに考えて、悩んで、決めてきたのだと思います。
「この会社で頑張ろう」
「この仕事なら続けられるかもしれない」
「この道に進めば、きっと未来につながるはず」
そう思って選んだ道でも、数年経ってから違和感が生まれることがあります。
何年も続けてきたけれど、やっぱり違う。
挑戦してみたけれど、これじゃない感があった。
周りから見れば恵まれている環境なのに、自分の心はどこか満たされない。
そんなことは、決して珍しくないと思います。
私自身、就職活動のときは必死でした。
有名大学の出身でもなかったので、学歴だけで不利になりたくないと思い、120社ほどエントリーシートを提出しました。
不景気の中で、ようやく希望する企業から内定をもらったときは、「この会社で骨を埋めるんだ」と漠然と思っていました。
「こんな私を採用してくれる会社は、ほかにないかもしれない」
そんな思いもあり、帰属意識の強い新入社員だったと思います。
けれど、数年働くうちに、少しずつ違和感が生まれました。
「私の時間を、これに使い続けていいのかな」
「このまま働き続けた先に、自分は納得できるのかな」
「本当にこの場所で、自分の力を活かせているのかな」
そんな問いが、頭の中に何度も浮かぶようになりました。
結局、私はこれまでに2回転職し、3社を経験しています。
でも、それを失敗だったとは思っていません。
もちろん、その時々では悩みました。
不安もありました。
環境を変えたからといって、すべてが解決するわけでもありません。
それでも、自分の感覚を鈍らせないために、自分なりに選び直してきたのだと思っています。
「違った」と気づくことは、失敗ではありません。
それは、自分の価値観や感覚を知るための経験です。
やってみたからこそ、違うとわかった。
続けてみたからこそ、自分に合わないものが見えてきた。
違和感を無視しなかったからこそ、次の問いが生まれた。
キャリアは、一度で正解を選ぶものではないのかもしれません。
選びながら、違和感を拾いながら、少しずつ自分の輪郭を知っていくものなのだと思います。
最初から「やりたいこと」で決めなくてもいい
学生の頃から、あるいは入社してすぐの頃から、誰もが「素敵な夢だね」「素晴らしい目標だね」と称賛されるような何かを持っている必要はないと思います。
キラキラしていて、家族や親戚、友人に胸を張って話せるような目標。
そういうものを持っていないといけない気がすることがあります。
でも、それは本当に自分の望みなのでしょうか。
もしかすると、私たちが思い描いている「立派な目標」は、よい会社員になるように育てられてきた中で身につけた、ひとつの思い込みなのかもしれません。
もちろん、目標があることは素晴らしいです。
でも、最初から「やりたいこと」でキャリアを決めなくてもいい。
やりたいことが見つからないなら、もっと小さな手がかりから始めてもいいと思います。
たとえば、
「もう続けたくない」
「ここにいるのは息苦しい」
「ずっと気になっていることがある」
「仕事以外で試してみたいことがある」
関心です。
やりたいことを見つけようとすると、どうしても大きな答えを探してしまいます。
社会に役立つこと。
収入につながること。
誰かに説明しやすいこと。
キャリアとして評価されそうなこと。
でも、自分の本音は、もっと小さなところに隠れていることがあります。
なぜか気になってしまうテーマ。
誰かの話を聞いていて、心が少し動いたこと。
本屋でつい手に取ってしまうジャンル。
SNSで何度も検索してしまう言葉。
仕事以外なのに、時間を忘れて考えてしまうこと。
それらは、まだ「やりたいこと」と呼べるほど立派なものではないかもしれません。
でも、自分の方向性を知るための大切な手がかりです。
キャリアは、最初から大きな夢で決めなくてもいい。
「もうこれは続けたくない」
「これは少し気になる」
「この環境は自分には合わない」
「こういう働き方なら、もう少し息がしやすいかもしれない」
そんな小さな感覚から始めてもいいのだと思います。
キャリアは、価値観が変わるたびに見直していい
10代、20代の自分と、30代、40代の自分では、大切にしたいものが違っていて当然です。
限られた時間、限られたコミュニティの中で形成された価値観と、社会に出てさまざまな出会いや経験を重ねた後の価値観が同じである必要はありません。
働く中で、いろいろな人に出会います。
理想の上司にも、反面教師になる人にも出会います。
尊敬できる働き方も、もう二度と戻りたくない環境も経験します。
結婚、出産、学び直し、健康、家族、働き方への考え方。
そうしたライフイベントや日々の経験によって、キャリア観が変わるのは自然なことです。
20代の頃は、成長できる環境を何より重視していたかもしれません。
30代になると、健康や家族との時間、心理的安全性、長く働ける環境を大切にしたくなるかもしれません。
以前は気にならなかった会社の文化や人間関係が、今は大きな判断軸になることもあります。
それは、一貫性がないということではありません。
価値観が変わることは、ブレではなく、自分自身のアップデートだと思います。
むしろ、変わらないことだけが正しいと考える方が、少し苦しいのではないでしょうか。
社会的な評価や他者との比較だけで、自分のキャリアを判断するのは難しいです。
誰かにとっての正解が、自分にとっての正解とは限りません。
周りから見れば安定している仕事でも、自分には息苦しいことがあります。
人からうらやましがられる環境でも、自分の心が少しずつ削られていくこともあります。
だからこそ、キャリアは何度でも見直していい。
今の自分が大切にしたいものを、今の自分の言葉で考え直していいのだと思います。
不安をほどくために、まず書き出したい3つのこと
キャリアがわからないとき、いきなり大きな答えを出そうとすると苦しくなります。
「自分の強みは何か」
「本当にやりたいことは何か」
「将来どうなりたいのか」
そう問われると、かえって何も書けなくなることがあります。
だから、私は「自己分析をしよう」と構えすぎなくてもいいと思っています。
自己分析というと、少し仰々しい。
正しい答えを出さなければいけないような気がする。
自分のことをうまく説明できないと、また落ち込んでしまう。
それなら、まずはただ書き出すだけでいい。
不安をほどくために、次の3つを書いてみるのがおすすめです。
1つ目:もう続けたくない働き方
まずは、「やりたいこと」ではなく「もう続けたくないこと」から書いてみます。
長時間労働がつらい。
人間関係に気を使いすぎる環境がしんどい。
意見を言いにくい職場が苦しい。
成長している実感がない仕事に疲れる。
誰かの機嫌を取り続ける働き方はもうしたくない。
そんなふうに、自分がこれ以上続けたくないものを書き出してみます。
これはネガティブな作業ではありません。
「嫌だ」と感じることの裏側には、自分が大切にしたいものがあります。
心理的安全性を大切にしたい。
自分の意見を持って働きたい。
学び続けられる環境にいたい。
誰かと協力して成果を出したい。
健康を犠牲にしない働き方をしたい。
そうした価値観が、少しずつ見えてきます。
2つ目:少し気になっていること
次に、少し気になっていることを書いてみます。
まだ仕事にするほどではない。
誰かに話すほどでもない。
でも、なぜか気になっている。
それくらいのもので大丈夫です。
最近よく検索していること。
本屋でつい立ち止まる棚。
人と話していて、少し熱が入るテーマ。
仕事の中で、なぜか詳しく知りたくなる分野。
いつか学んでみたいと思っていること。
それらは、今すぐキャリアになるものではないかもしれません。
でも、未来の自分につながる小さな種かもしれません。
やりたいことは、突然はっきり見つかるものではなく、少し気になることを重ねていく中で育っていくものなのだと思います。
3つ目:仕事以外で試してみたい小さなこと
最後に、仕事以外で試してみたい小さなことを書いてみます。
ブログを書く。
資格の勉強をする。
本を読む。
副業について調べる。
講座を受けてみる。
誰かに話を聞いてみる。
SNSで発信してみる。
小さなことで構いません。
大切なのは、いきなり人生を変えようとしないことです。
キャリアがわからないときほど、大きな決断をしなければいけないように感じます。
転職しなければ。
資格を取らなければ。
副業を始めなければ。
何者かにならなければ。
でも、本当はもっと小さくていいと思います。
仕事以外の小さな挑戦は、自分の感覚を取り戻すきっかけになります。
「これは少し楽しい」
「これは思ったより向いていない」
「これはもう少し続けてみたい」
そうした感覚を知ることも、キャリアを考えるうえで大切な材料になります。
ノートとペンで、自分の言葉を書いてみる
書き出すときにおすすめなのは、スマホやPCではなく、ノートとペンを使うことです。
もちろん、スマホでもPCでも書けます。
でも、頭の中にある言葉をそのまま出したいときは、手で書く方が向いている気がします。
ノートは、誰かに見せるものではありません。
きれいに書く必要もありません。
立派な言葉にする必要もありません。
矛盾していても、途中で話が飛んでも、同じことを何度も書いても大丈夫です。
むしろ、整っていない言葉の中に、本音が混ざっていることがあります。
「疲れた」
「もう嫌だ」
「でも、これは少し気になる」
「本当はこういう働き方がしたい」
「私は何を怖がっているんだろう」
そんな言葉を、自分の字で書いてみる。
それだけで、頭の中で絡まっていたものが、少し外に出ていく感覚があります。
自分のことは、自分でも意外とわかりません。
だからこそ、考えるだけではなく、書いてみる。
キャリアがわからないときは、答えを出す前に、まず自分の中にある言葉を外に出してみることが大切なのだと思います。
まとめ:「やりたいことがない」ではなく、「模索中」
やりたいことがないまま働いていると、自分だけが立ち止まっているように感じることがあります。
周りは前に進んでいるように見える。
明確な目標を持っているように見える。
自分だけが、何も決められずにいるように感じる。
でも、キャリアは最初から正解を持って進むものではありません。
「もう続けたくない」
「ここは少し息苦しい」
「これは少し気になる」
「仕事以外で試してみたい」
そんな小さな違和感や関心を拾っていくことも、立派なキャリアの始め方です。
やりたいことがないことは、悪いことではありません。
価値観が変わることも、ブレではありません。
挑戦してみて違ったと気づくことも、失敗ではありません。
一度選んだ道を見直すことも、逃げではありません。
むしろ、自分の感覚を無視せずに生きようとしているからこそ、迷うのだと思います。
やりたいことがない自分を責める前に、まずは今の自分が何に疲れていて、何に少し心が動くのか。
そこから、少しずつほどいていけばいい。
キャリアがわからない30・40代に必要なのは、いきなり大きな夢を見つけることではなく、自分の小さな違和感をなかったことにしないことなのかもしれません。
今日、ノートにひとつだけ書くなら、こんな問いで十分です。
「私は、もう何を続けたくないのだろう」
その答えは、まだ立派なキャリアプランではないかもしれません。
でも、自分の人生を少しずつ取り戻すための、大切な一歩になるはずです。


